2018年4月25日

久方ぶり

2017.2.22 久方ぶりに若い人に私の生き方論を話すことになった。

畜産では家畜にも保険をかける。医療保険と死亡保険だ。1年毎の契約で、その打ち合わせにI獣医と共済組合(農業保険のクミアイ)の若い職員さんの二人が来場、折悪しく亮子君は子供を連れて病院へ、和弥は契約の木材工場からオガコのタンクが詰まったとの電話で戸河内へ、従ってお二人の時間つぶしの相手は私と言うこと相成った。

I獣医さんが先日差し上げた私の小冊子”見浦牧場の空から”の書評を始めて、事務所のボロストーブの傍らで時間つぶしが始まった。若い共済の職員君(K君としようか)には気の毒だが、引退した私には牧場の事務関係は説明できない。担当の亮子君の帰宅まで時間を潰すしか方法がなかった。

私の小冊子”見浦牧場の空から”には私の短文34個が掲載されている。「面白かった」というI獣医さんに、どれが一番でしたかの問かけに、”こがーなお客さんがおるんじゃーけー”が良かったと言う。広島の”エディオン”という巨大な家電量販店が倒産から立ち直った先々代の重役氏との会話に出会った小さな物語、貴方もインターネットで読んでほしい。キーは”見浦牧場の空から”。何度も危機に遭遇した私の生き様に大きな影響を与えた出来事だったから。

あれから60年以上も経つ。広島の小さなバラックのお店は日本の3大販売店エディオンに成長した。その再起の一瞬に触れた小さな文章は若者に訴える何かをもっていた。

それから諸々の雑談、見浦牧場のモットーの「自然は教師、動物は友、私は考え学ぶことで人間である」などと話は尽きなかった。

考えてみれば、私は貧乏だったかもしれないが、素晴らしい先人や先輩方に出会えた幸せな人生だった。話すことは山ほどあって尽きることがない。有り難いことである。

たった一度の人生である。与えられた環境は様々だが、生まれたことだけでも幸運、後は努力に応じて人生が開けると私は考える。たとえ子供であっても、この理は変わりはない。問題はそれを誰から学ぶかである。幸せな人は父母から教えられるかもしれないが、父母がだめなら学ぶ先は、自分が暮らす集団の中の先輩かも知れないし、友人かもしれない。大切なのは人間は集団で暮らす動物、生き残るための集団を見つけ、その中で学んで成長する、それが一度きりの人生を有意義に生きる方法だと信じている。

でも漫然と暮らしている人が多いね。今日が過ぎても明日がある、明後日もあると錯覚、若い時は人生には必ず終末があるなど考えない人ばかり。熱心に老人の昔話に聞き入ってくれた青年、彼等の人生が素晴らしいものになることを祈りながら話を終えたんだ。

2017.2.22 見浦哲弥

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