2020年7月19日

ボールペン

今はどの家庭にも何本もある使い捨てのボールペン、私の机の上だけでも常時10本近くある。私の少年時代は万年筆と言いたいが貧乏人には高嶺の花、鉄製の付けペンが常用品だった。それも10本ぐらいしか買えなくてね。一度に1グロス (144本) 入の一箱が買えたときは嬉しかったね。書き味が悪くなったら、すぐ替えることができる。インクは小瓶で売っていた。パイロットとかセーラーとか記憶は危ういが。付けペンは鉄製ですぐ錆びて書き味が落ちるから、ペン先が小箱で買えたときは、それだけで勉強が進む気がしたね。

ところが戦後、75年前の話、アメリカからボールペンなる新兵器が進出してきた。インクをつける必要はないし、文字がにじむことはない、おまけに署名など重要書類にも使える、とんでもない文房具だったね。でも高価で庶民には高値の花だった。

ところが日本人はこれはと思ったらコピーをする。パテントを盗んだりはしないが盲点があれば制約をくぐり抜ける努力をする。先端のマイクロボールの真円度と仕上げ研磨で先進国を追い抜いて、インクも黒は日本には長い歴史と技術があった。そして日本人のこだわりで、先進国を追い抜いて独占して、安価で実用性の高い日用品から高級品まで、世界を席巻したと思っていたら、何時の間にか中国がさらに安価で多色の華やかなボールペンで進出してきて。我が家にも新旧の、そんなボールペンが何十本と転がっている。日本製もあるが中国製が多い。東京で長年スーパーに勤めた遠縁の義姉が時折訪れるお店で余分な買い物をした物を集めて送ってくる。その中に中国製のボールペンが毎度含まれていて、何時の間にか我が家のデスクで存在を誇示するようになった。書き味などは日本製と変わりがない。先端の超ミニボールは日本製とかで当然ではあるが、書き味が違うのはインクに技術の差があるらしい。

ボールペンに限らないが、どの業界も常に前進を心がけないと後発者に追い抜かれて衰退という羽目になる。ボールペン1本にも、その経済の厳しさが現れている、そんな事を考えながら使っているのだ。

でも使い比べてみると日本製は華やかさはないが書き味、インク等で1日の長は今も守れている。競争社会の世界だから華やかさを取るか実質を取るかは判断が難しいが、地道に本道を歩く日本製に私の歩いた道を重ねてエールを送っている。

ボールペン1本の盛衰にも、 私の人生と重ねて振り返る、色々あったなと。

長生きをすることは、様々な事を見ると云うことだ。前向きに考えると結構面白い。

2020.5.2 見浦 哲弥

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