2021年1月16日

ツクツクボウシ

仕事に追われて気がつくとツクツクボウシが鳴いていた。長い梅雨が晴れてミンミンとミンミンゼミが鳴いて、やっと夏が来たと思ったら、ツクツクボウシ、お盆近くで、はや秋が気配をみせた、それがツクツクボウシの声、それでも塩辛トンボは飛んでも、まだ赤トンボの大群は姿を見せないから、もう少しは夏があるのかな。

振り返ると70年前のこの頃は、向深入で野草の干し草刈りの真最中、草刈鎌一丁で刈り取りから、転草(裏返しにする) 、草集めまで手作業、出来上がった干し草を背負って山腹の急坂を道端まで運ぶ、そんな重労働の連続だったな。元気盛んの青年でも辛かった仕事でね。お盆が過ぎると晴天が続く日がなくて毎日通り雨ががやってくる。お陰で折角の干し草が牛が食べない敷科となって残念がった遠い違い日の思い出が蘇る。

小板は中国山地の小さな集落である。戦後ようやく訪れた平和でも広島から小さなバスで4時間も5時間もかかる超山奥、日に2本のバスが都会と結ぶ、たった一本のラインだった。なにしろ電話もなかったから役場と連絡するのも1日がかり、病気になったら大変だった。そんな超辺境の地だった小板には、自然だけは一杯だったね。

雪が降って、春が来て、夏がタ立を連れてきて、そして田園が稲穂で色づいて、そんな自然の営みが当たり前のように続いていた。よく見れば微妙に変化はしていたのだが。そして今年も最高の気温の猛暑のときが過ぎようとしている。それを教えてくれる一つがツクツクボウシ。

忘れがちな時の移ろいを教えてくれる自然、そして我が身の老いを痛感させられる時間、そして、よく生きたなと感慨にふけっている。

2020.8.15 見浦 哲弥


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