2020.2.2 Kさんが今年の初めに死んでいた。まさに晴天のへき歴だった。昨年の12月の初め、久方ぶりに我が家を訪問されて世間話をしたばかりで、次のニュースが死亡されたとは。動物の生き死にに関わって生活している私にとって、命に関わる出来事は常人より鋭いと自負していたのに全く気がつかなかったとは。勿論、最後の世話話で、お互いに老境、健康についての意見の交換はしたのだが。
彼は広島の人、亮子君(息子のお嫁さん)の父君と同じ三菱で働いて定年退職、環境の変わった田舎暮らしをしたくて小板にやってきた。道端で今は亡き親戚のY君と立ち話をしていた時、土地を探していると声をかけられたのが最初。
ログハウスのキットを買って自分で山小屋を作って、今度は炭焼き窯を作って、次は畑で野菜を作るので堆肥がほしいと。Kさんが購入した土地は倒産したT家の田園や山、長年の放置で荒れた土地は肥料を投入しなければ生産力は回復しない、それには堆肥しかないんだな。そこでまず土作りのアドバイス、以来、毎年1-2台の堆肥の搬入が恒例になった。一方でKさんから不要になった機械や資材を譲り受けて見浦牧場も大いに助かったのだが。
唯一問題があって、Kさんは酒が大好き、私は40代に飲酒で子牛を殺してから酒を断って以来一滴も飲まないのを信条としてきた。いくらKさんに酒を飲んで大いに語ろうと誘われても譲るわけに行かない。その度に一緒に酒が飲めたらと彼の愚痴、ところがこれだけは私の生き様、譲るわけに行かなかったね。しかし、何が気にいったかは知らないが時折は話に来て事務所で世間話、私は少年まで都会生活を経験している。そんな関係で親近感を持ってもらったのかも。
その彼が前立腺を患った。手術は成功したが、私も排尿が止まって危うく一貫の終わりを経験したことがあって親近感が増したらしい。貴方もご存知だろうが男性は老化すると大なり小なり前立腺に問題が起きる宿命である。
12月、例によってフラッと彼が事務所に現れた。免許を返納して遠出が困難になったと愚痴を言いながらね。世間話をして最後に「見浦さん前立線の具合は」と開いてきた。私は頻尿と尿もれが始まったかなと正直な返事をした。彼「調子が悪くて前立腺の手術はしたんだが、尿もれがあってね、オシメをしてるんだ」と。尿もれは老人のさが、これはどうにもならないと笑い飛ばしたんだが、本人が知ってか知らずか本当は余命3ヶ月の宣告を受けていたのだとか。当人はそこまでは知らされていなかったらしい。だから普通に雑談して別れたのだが、それから2ヶ月もしないうちに死なれるとはね。愕然としたんだ、彼より年長で老化の激しい私より先に逝くとは想像していなかった。
彼は私より10歳近くも若い、時々は怪我や病気で入院をしても、私より先に人生を終えるとは夢にも思わなかった。最後に訪ねてきて体の(前立腺)の不調を訴えられても、老人になれば男性が誰もが患う症状、私だって無縁ではない、適当に気休めな話で済ませたのだが、2ヶ月も経たないで死亡を聞こうとは。
人生の最後は突然訪れる、それが定めかもしれない。彼はそのことを話したかったのかも。ともあれ友人が1人旅立った、間もなく私も旅立つ。次の世界で彼に会えるとすれば、あの時もっと話すべきだったと謝まろうと思っている。
2020.2.29 見浦 哲弥
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