2020年10月29日

カラスのボス

 見浦牧場の西側は小さな小山である。四方を見下ろせる小山の松林はカラスの絶好の宿泊場所、いつのころからかカラスの大群が住み着いた。考えてみれば三段峡をはじめとしてキャンプ場、深入山や刈尾山の登山道等、都会人が集まるところが近辺にある。カラス君にしてみれば食事には大変都合がよろしい。おまけに都会人が少ない日には牛舎に侵入して牛の餌を盗食、天国だとのたまう。人間様には大迷惑なのだが、カラス君は馬耳東風、いやカラス東風で傍若無人である。

この地方の三段峡をはじめとする都会人が集まる場所は、厳しい積雪期が過ぎるとカラスどもの恰好のレストランに変化する。目ざとい彼らは好機到来とばかり観光地を周るツアーに出発して見浦牧場のカラスも激減、10~20羽で安定する。それでもいたずらはやめないが冬期のようなすさまじさはない。スカベンジャーとしては我慢の範囲内である。

10月13日、カラスの軍団の一部がご帰還である。総勢50羽ぐらいか、ここは俺たちの餌場だとて子牛の餌に群がる。人間が折ったぐらいではびくともしない度胸の持ち主たちである。この春はノフウド(生意気、やんちゃの意)なサブリーダを罠で捕まえて見せしめにぶら下げてやったら、彼らもしばらくはおとなしくなったのだが、もう記憶の彼方に消し去ったらしい。また思い知らせてやると老人は唇をかみしめる。

そして来る雪、伴ってカラス軍団の本体も見浦牧場にご帰還になる。また切歯扼腕(せっしやくわん:悔しいがどうすることもできないこと)して悔し涙を流しながら雪解けを待つことになる。自然はいいことばかりではないんだ。

おい、カラス、俺は年は取っても無抵抗になったわけではない、覚悟していろよ。

2019.10.13 見浦 哲弥


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