2019年2月13日

岡本豆腐の復活

2018.2.6 三段峡豆腐の岡本さんが来訪した。壮年の男の人二人を連れて。先日、岡本さんが営業を再開するとの噂が流れてきて、家族で喜んでいた矢先だったので嬉しかったね。

彼との付き合いが始まってもう30年近くにもなるだろうか、長い長い時間が経ってしまった。副産物のオカラの引取を依頼にこられてからの付き合いで、何十年にもなる。

その彼が私の話の何に感銘したかは知らないが「それなら俺は大豆から取る豆腐の数を決めて、それでお客さんの心をつかむ」と宣言したのです。律儀な彼は原料の大豆の値段が上がっても初心を守り抜きました。大豆は国際商品ですから経済の変動で高騰する時もある、それを愚痴を言いながら頑張る、そんな彼は私達家族の心の友に変化して行きました。そして30年近くのお付き合いが続いたのです。

人の心理は不思議なもので、彼の豆腐への姿勢は少しずつファンを増やし始めた。そして30年、冷蔵庫に岡本豆腐がないと寂しくてと言うお客さんが出始めたのです。品質にこだわる岡本豆腐は決して安くはありません。しかも絹ごし豆腐とは違った田舎豆腐、でも口にすると「あー、これは岡本豆腐」と一瞬で訴えてくる、その味はどこの豆腐も及ばない味の田舎豆腐に変化していたのです。

田舎豆腐は個性が強い豆腐です。スーパーに並べられた豆腐は見た目と一瞬の味にこだわる、大量生産と万人向けの味と、そしてコスト削減と、市場経済の中での生き残りゲームの世界です。 同じ視点では後発の商売に勝機はありません。私が学んだ経済は大資本で価格競争をするか、一 歩先んじて新しい価値を創造するかしか競争で生き残る手段はありませんでした。

まして新人がゼロから参入するのは困難の極みです。当然敗退者が続出する世界なのです。しかし、悪貨は良貨を駆逐すると言い切れる世界でもありません。時間はかかりますが、いい物はいい、悪いものは悪いと評価してくれる世界でもあるのです。ただ時間がかかる、そんな時"手を抜いたら儲かるよ"の声がかかる、そんな一面がある世の中なのです。多くの人がその誘惑に打ち勝つことが出来ない、それは利益追求が第一と理解している経営者が多いからなのです。勿論、資本主義の世の中ですから赤字の垂れ流しでは破滅が当然ですが、その狭間を消費者に自分たちの思いが理解してもらえるまでの時間を懸命にくぐり抜ける、そんな戦いなのです。しかし、私達の時間は有限です。その焦りから消費者に思いが届くまで耐えることが出来ないで失敗者が続出する、そんな世界を見続けてきました。

夢を持って挑戦する新人に「頑張って」とエールを送ることは簡単ですが、困難に打ち勝ってと簡単に激励するのは私には出来ません。ただ成功を祈るだけなのです。

岡本豆腐はそんな戦いを生き抜きました、私の素晴らしい友人なのです。

2018.8.27 見浦哲弥

0 件のコメント:

コメントを投稿

人気の記事