私も年相応に物忘れが進行中、特に記憶する能力の低下が著しい。トラクターのレバー操作など昨日までは考えることなく出来たのに、一瞬、どうだったかと迷う。もっとも先輩の友人は田圃の中でレバー操作の記憶が消えてトラクターが立ち往生、隣家に故障したと駆け込んで笑い話になった。確かその時点の年齢は今の私より10歳は下だった。そんな事もあって現在の私の悩みを本気で聞いてくれる人はいない。が、私も確実に人生の終わりに近づきつつある。
現在は3月から施行された、痴呆の選別検査なるものにパスしないと高齢者講習も受けられなくなった。そして、その講習を受けるために11月1日に沼田自動車学校に出向いた。
久方ぶりの高速道路、単独運転は慣れるまで少々不安だったが、長い運転歴で通い慣れた道、思い出すにつれて快調に走る。もっとも制限速度を確実に守る運転は後続車の追い越しの連続、これのほうが怖かったね。指定時間の2時間前に到着、時間を持て余す。なにしろ当方は足が痛い、歩き回って時間を潰すの手段が取れないので閉口したね。
指定時間に教室に向かう。試験官の職員は顔なじみの人、彼も老人になっていた。受験者約20人、全員が私より若いと思われる人達、くたびれかたも様々である。席が隣の男性「オジサンなんぼの」「86よ」「俺より3つ上か」と。
テストは例によって16通りのイラストが幾つ覚えられるかの試験、正確な現在の日付、曜日、時間、住所、氏名、電話番号、年齢、の記入、指示された時間を正確に時計の文字盤に書いて表現するの3点。ところが意地が悪いことに問題を見せた後に、別の話題を持ち出して関心をはぐらかしてから答案用紙に記入させると来る。記憶力の低下は個人ごとに異なるが、最初のイラストの試験が老人には一番つらい。示された時は確実に覚えたと思っていても、間に他のことが耳に入ると見事に記憶が消える。懸命に思い出そうとするが何のイラストだったか思い出せない。若い諸君には想像もできない老人の世界なのである。
それに比較すると他の2点は私には覚えやすい。もっとも電話番号は多少の不安があるが、時計の文字盤は時間から時間の毎日の仕事のつながりで、こればかりは自信がある。お隣の紳士君は「覚えたと思ったのにイラストは3しか書けなかった」と、そして「家の周りしか自動車に乗らないのに難しいことになって」と憤慨。「あがー言いいんさんな、お互いこの年まで、この元気は有り難いんで」と話すと「そがーいや、そうじゃな」と機嫌をなおして「次の講習は一緒ならええですのー」と。
そして1週間後だという公安委員会からの通知を待ったんだ。
先日、その通知が来た。成績は80点、75点以上は正常と判断されて、次の高齢者講習の費用は3000円安い。摘要に「正常です、痴呆症ではありません」ときた。早速、次の高齢者講習を申込んだのは言うまでもない。これで後三年はトラックに乗れる。今日は、まだ元気だという話。
2017.11.10 見浦哲弥
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